東京大学大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻
地球・生命 | Earth & Life
地球の歴史とは、変動の歴史であると言えます。表層環境の変動は、否応なしにそこに生きる生命に重大な影響を与え、それまで繁栄していた種には容赦ない淘汰の鉄槌がくだされ、脇役だった種には繁栄へのチャンスが与えられます。例えば、白亜紀末の巨大隕石衝突と恐竜の絶滅、その後の哺乳類の繁栄はその最たるものです。当研究室では、地質試料分析や室内実験を手掛かりに、過去の表層環境変動とその要因を推理し、生物大量絶滅や全球凍結と生命・大気の共進化といった、地球史上に起こったミステリーの解明に挑んでいます。
今から25-20億年前、地球は表面すべてが氷で覆われる全球凍結も含む、複数回の大氷河時代を経験しました。どうして地球は氷河時代に陥り、どのようにそこから回復し、また生命は過酷な環境をどう生き延びたのでしょうか。分かっていることは、氷河期の前後で光合成生物が大繁栄し、今のような酸素大気が形成したことです。これらの事件は、どう結びついているのか、謎解きを進めています。
地球はこれまで、数限りない隕石衝突を受けてきました。隕石衝突は、地球生命史にどんな役割を果たしてきたのでしょうか。地球の大気や水、生命前駆物質でさえ、衝突でもたらされる可能性があります。しかし一方、恐竜をはじめとする生物の大量絶滅を引き起こしたとも言われています。フィールド調査と室内実験により、複合的に隕石衝突の役割を明らかにしています。
太古代の地球は、今と似ても似つかぬ姿だったかもしれません。大気中にはメタンが存在し、タイタンのようなもやに覆われた、オレンジ色の惑星だった可能性さえあります。当時の地表環境は、温暖で安定していたのでしょうか。そこではどんな生命圏が形成されていたのでしょうか。この謎を明らかにすることは、地球の歴史だけでなく、太陽系外の地球型惑星の姿を予想する手がかりにもなります。
カナダ、オンタリオ州での
野外調査風景
イタリア、グッピオのK-P境界層
上:太古代の大気化学反応実験
左:隕石衝突を模擬するレーザー銃
生命のもととなった最初の有機物はどこからもたらされたのか?
それは惑星科学上最大の関心事の一つです。当研究室では地球がその進化の過程でたびたび経験してきた「天体衝突」に焦点をあて、この問題に取り組んでいます。天体衝突はK/P大量絶滅[K/Pにリンク]に代表されるように生命を滅ぼす印象を持たれがちですが、実は生命起源にも大きな役割を果たし得ます。以下では、従来の生命起源仮説を紹介しながら、当研究室の研究内容についてご紹介します。
全球凍結とは、地球表面がほとんどすべて凍りついてしまうという気候状態であり、その規模や影響から言っても地球史の中でも最もドラマテックなイベントであるといえます。この全球凍結は、今から約22億年前、7億年前、6億年前の少なくとも3回生じたと考えられており、我々グループは、特に22億年前(原生代初期)の全球凍結に注目して研究を進めています。というのも、この全球凍結イベントが、実は、大気中の酸素の増大と深く関連していると考えているからです。